大阪市立美術館

興福寺国宝展 鎌倉復興期のみほとけ

会期
平成17年(2005)6月7日(火)~7月10日(日)
観覧料

一般1,300円(1,100円)、高大生800円(600円)  中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方、大阪市内在住の65歳以上の方は無料〔要証明(原本に限る)〕   ※カッコ内は、前売り・20名以上の団体料金

前売り

4月11日(月)より前売り開始 おもな前売り券発売場所: 電子チケットぴあ【Pコード:685-965】、 ローソンチケット【Lコード:54237】、CNプレイガイドほか主要プレイガイド、イープラスなど

展覧会概要

大阪市立美術館では、平成17年6月7日(火)から7月10日(日)まで特別展「興福寺国宝展 鎌倉復興期のみほとけ」を開催します。  本展では、奈良・興福寺ゆかりの鎌倉期仏教美術を、同寺の宝物を中心に、国内の寺社や美術館・博物館などが所蔵する関連の宝物など計78件により紹介します。  日本を代表する大寺として知られる奈良・興福寺は、710年の創建以来、戦禍や火災に見舞われるたびに力強く復興し、今日にその偉容を伝えています。なかでも壊滅的な被害を受けた平安末の戦乱後、鎌倉期の復興造像には康慶、運慶などの優れた仏師が参加し、日本仏教美術のルネサンスとも言うべき成果をあげ、数多くの尊像が現在に伝わっています。また絵画でも、この頃には成立していたと思われる南都絵所の絵師たちがすぐれた仏画・垂迹画・絵巻などを制作しています。    興福寺は2010年に創建1,300年を迎えます。長期的な復興事業は現在も行われており、創建1,300年には江戸期に焼失した中心伽藍の中金堂再建に向けた立柱式が計画されています。    たくましさと写実性を具えた鎌倉仏教彫刻を中心に、絵画や書跡、考古資料、中金堂再建資料などを通して、復興の成果と意義を展望する内容で、今日の復興事業を理解していただこうとするものです。

展示構成とみどころ

興福寺鎌倉復興期の尊像

鎌倉復興期の尊像は、興福寺を代表する寺宝の一部です。1180(治承4)年、平重衡による南都焼き討ち後、その復興には康慶、運慶らの仏師が活躍し、日本仏教彫刻史に新潮流を起こしました。運慶一門による肖像彫刻の最高傑作として知られる「無著菩薩立像」「世親菩薩立像」をはじめ、「金剛力士立像」や「天燈鬼立像」(いずれも国宝)など、写実的で力強い像が現在に伝わっています。旧所在の堂宇を意識した区分けにより諸尊像を紹介します。

春日社寺曼荼羅の世界

興福寺と春日社は藤原氏の氏寺と氏神で、春日明神は興福寺を擁護すべき権現と崇められていました。上方に春日社の景観を描き、下方に興福寺の伽藍や仏像を配置した社寺曼荼羅図や、南都復興前後の諸尊の様子を伝える遺作として大変貴重である「興福寺曼荼羅図」(重要文化財)などを展示し、鎌倉復興期における興福寺と春日社の神仏習合を探ります。

解脱上人貞慶の事蹟

解脱上人貞慶(1155~1213)は、南都仏教を復興した学僧・律僧として知られています。1189(文治5)年には最勝講を勤めて「三会巳講」となりましたが、1192年頃より信仰生活の場として笠置山を選び隠棲、晩年には観音の補陀落浄土への往生を望み、観音霊場海住山寺に移住しました。貞慶自筆の奥書を持つ「明本鈔」(重要文化財)を含む文書類や貞慶の肖像、海住山寺に伝わる彫刻などから貞慶の事蹟をたどります。

法相教学とその図像

鎌倉期は伽藍や堂宇のみならず、法相教学の復興期でした。「外界のあらゆる存在は唯(た)だ内界の識、つまり自心によってつくり出されたものにすぎない」という思想に基づく法相教学の本質を見つめます。7世紀にインドから中国へ多くの経典を請来した玄奘や、その弟子で法相宗の祖師・慈恩大師基(じおんだいしき)にまつわる絵画、玄奘と慈恩大師が漢訳した経典「成唯識論」(重要文化財)などを紹介します。

興福寺をめぐる - 南都絵所の展開

鎌倉時代から室町時代にかけて、南都絵所の拠点となった興福寺に伝わる絵画などを紹介します。特に鎌倉復興期の絵画では、表現様式は鎌倉新様の萌芽をうかがわせながら、図像は奈良時代に範をとっているものが注目されます。「二天王像 持国天」(重要文化財)など、復古的な機運の中で制作された作品を展示します。

中金堂再建へむけて

2010年に立柱式が予定される中金堂の再建計画を紹介します。興福寺伽藍の中核となる中金堂は1717(享保2)年、近世最大の火災で焼失し、1819(文政2)年に仮堂的に復元されました。かねてより再建が切望されるなか、2000(平成12)年に解体、基壇部分の発掘調査を行いました。これまでの調査で出土した貴重な鎮壇具や、20分の1の再建模型を展示します。

主な出品作品

※作品保護のため、会期中展示替えを行います。 ※展示期間は予定です。変更になる場合があります。

国宝

国宝 無著菩薩立像

運慶作 鎌倉時代 1212(建暦2)年頃 奈良 興福寺蔵 【全期間展示】

無著(インド名アサンガ)は4世紀に北インド・ガンダーラで生まれた学僧で、弟世親(インド名ヴァスバンドウ)とともに法相教学の基礎となる重要な論著を残した祖師である。  遠く時空を隔てた伝説的な高僧のイメージを、モデルの存在を思わせる克明で具体的な写実表現を通して、日本人に置き換えてわかりやすく表した。

国宝 薬師如来像頭部

白鳳時代 685(天武14)年 奈良 興福寺蔵 【全期間展示】

もとは飛鳥の山田寺講堂にあった丈六薬師如来像の頭部。  1187(文治3)年に再建されていた興福寺東金堂に移されて本尊となったが、1411(応永18)年の火災で体部以下を失った。現在の本尊像の台座内に納められていたが、1937(昭和12)年に発見された。単純化された曲線と曲面で構成されて、朗らかな表情を浮かべる白鳳時代の遺産。

国宝 金剛力士立像

吽形 鎌倉時代 12~13世紀 奈良 興福寺蔵 【全期間展示】

旧西金堂本尊丈六釈迦如来像の左右前方に配置されていた一対の金剛力士像のうちの吽形。口を閉じて力を内に蓄積するこの像は、肋骨から首筋が強調され、両手の激しい動きから生じる動勢が腰、脚から裳裾にまで伝わる。むき出すような玉眼と、骨格、筋肉、血管などの写実的にして劇的な表現と相まって、気迫に満ちた忿怒相となった。

国宝 玄奘三蔵絵 巻第3

鎌倉時代 14世紀 大阪 藤田美術館蔵 【展示期間:  6月28日~7月10日】

法相宗の祖師である唐像玄奘三蔵の生涯を、12巻に及ぶ長編に描いた新本玄奘三蔵絵。『大乗院寺社雑事記』には信円が作らせた旧本があったことが記されている。この旧本は何らかの理由で失われ、鎌倉時代末期になって新調された。新本の絵師は金銀濃彩を駆使した壮麗な色調や運筆などから、当代随一の絵師高階隆兼と目されている。

重要文化財

重要文化財 薬王菩薩立像

鎌倉時代 1202(建仁2)年 奈良 興福寺蔵 【全期間展示】

良薬をもって人々の心身を癒した兄弟の兄菩薩で、釈迦如来像の脇侍として薬上菩薩とともに左右に配される例が多い。明治時代に発見された像内納入品によって旧西金堂本尊丈六釈迦如来像の両脇侍と確認されたこの2体は、堂々とした体躯ながら整然・悠揚とした造形で、鎌倉復興期の諸像の中では古典的・復古的な優品といえる。

重文 興福寺曼荼羅図

鎌倉時代 12~13世紀 京都国立博物館蔵 【展示期間:6月7日~26日】

現存する春日社興福寺曼荼羅図の最古本と目される。東金堂文殊菩薩坐像や南円堂四天王立像(現仮金堂安置)など、鎌倉復興期に制作された諸尊の像容に一致し、鎌倉復興前後の興福寺の様子を伝える作品として大変貴重である。尊像全体に裏箔を施し、肉身を金泥塗りとする皆金色表現、また細密画表現などから、鎌倉初期の制作とみられる。

関連イベント

講演会

時間 / いずれも午後1時30分~3時 場所 / 当館1階 講演会室 定員 / 150名 (当日、午後1時より先着順で整理券を配布します。)   ※ 聴講は無料ですが、本展の観覧券が必要です。

6月11日(土)

興福寺の鎌倉復興をめぐって 講師 / 多川 俊映 氏(法相宗大本山興福寺貫首)

6月18日(土)

貞慶の信仰と宗教活動 講師 / 西山 厚 氏(奈良国立博物館資料室長)

6月25日(土)

興福寺鎌倉復興期の諸尊 講師 / 鷲塚 泰光 氏(元奈良国立博物館長)

7月2日(土)

学芸員による作品解説(彫刻・絵画) 講師 / 石川 知彦、齋藤 龍一(当館学芸員)

7月9日(土)

運慶と定慶-興福寺鎌倉復興をとげた天才と奇才- 講師 / 藤岡 穣 氏(大阪大学助教授)

香りの講座

6月19日(日)

香の文化史 天平の香り・鎌倉の香り 講師 / 畑 正高 氏(香老舗松栄堂 社長) 時間 / 午前10時30分~午後0時 場所 / 当館1階 講演会室 定員 / 150名(当日午前10時より先着順で整理券を配布します。)  ※ 聴講は無料ですが、本展の観覧券が必要です。

主催

大阪市立美術館、法相宗大本山興福寺、朝日新聞社、朝日放送

後援

文化庁、奈良文化財研究所、奈良県、奈良県教育委員会

協賛

ニッセイ同和損害保険、凸版印刷、香寿軒

協力

株式会社エーエス、香老舗 松栄堂、日本郵政公社近畿支社

TOPに戻る