新館長就任のご挨拶
- 投稿日時
- 2022/04/01
館長メッセージ
大阪市立美術館は昭和11年5月に開館した、日本で三番目に古い公立美術館です。コレクションは日本、東洋の古美術品を中心に8500点を数え、わが国屈指の質の高さを誇っています。その多くは市民による寄贈で、まさに市民が育てた美術館と言って良いでしょう。また、特別展では海外の美術館展も開催されます。大阪市の美術館なのに大阪市以外の美術品が展示されるのはなぜ?と思うかもしれません。その理由は、大阪市にいながら日本全国、さらに世界の名品を鑑賞するためです。言い過ぎではなく、大阪で世界を知るためです。戦後になって施行された社会教育法や博物館法よりも早く、大阪市民は自らの手でそれを成し遂げたのです。
私は館長に就任するにあたり、この理想と歴史を重く受け止めています。と同時に市民の期待とニーズに応える姿勢を大切にしたいと考えています。大阪市立美術館は今秋より2年半に及ぶ改修工事に入ります。2025年春のリニューアルオープンでは、さすが大阪市の美術館はおもろいことしよる、と言っていただけるような姿で戻ってきたいと思います。
2022年4月
大阪市立美術館館長
内藤 栄
内藤 栄(ないとう さかえ)
1960年埼玉県生まれ。筑波大学大学院博士課程芸術学研究科退学。サントリー美術館で8年間学芸員として務め、「オランダ美術と日本」展や「女神たちの日本」展などを企画した。35歳で奈良国立博物館に移り、工芸室長、工芸考古室長、学芸部長などを歴任した。同館では毎年秋に開催される正倉院展を長年担当したほか、「仏舎利と宝珠」、「古密教」、「白鳳」、「糸のみほとけ」などの特別展を企画した。専門は仏教工芸史で、仏舎利の信仰に関わる美術工芸、密教工芸、正倉院宝物に対して特に関心を持って研究している。45歳で筑波大学より舎利荘厳美術の研究で博士号(芸術学)を授与された。著書に『舎利荘厳美術の研究』(2010年、第22回國華賞受賞)、『舎利と宝珠』(2011年)がある。